退職代行で「失敗」と言われる本当の意味
こんにちは、いしゆみです。
私は法律事務所に在職中、約3000件の退職相談に対応してきました。
その経験から断言できるのは、退職代行の「失敗」は辞められなかったケースだけではないということです。
この記事では、あなたが後悔しやすいポイントを先に言語化し、失敗を回避するための見取り図を作ります。

失敗とは「辞められない」だけではない
「退職代行で失敗した」と聞くと、多くの人は「退職できなかった状態」を想像します。
けれど法律事務所で相談を受けていると、失敗の中身はもっと幅広く、退職自体は成立しているのに「結果として損をした」「心がすり減った」というケースが非常に多いです。
たとえば、退職日は決まったのに会社から本人へ連絡が来続けて精神的に追い詰められた、必要な書類が届かず転職先の入社に支障が出た、想定外の費用を追加請求された、という相談は珍しくありません。
つまり失敗の本質は、退職の成立だけでなく「退職後の生活がスムーズに回るか」「余計な火種を残さないか」という点にあります。
私は法律事務所に在職中、約3000件の退職相談に対応してきましたが、失敗を感じる人ほど「やめること」より「やめたあと」を軽く見てしまっている印象があります。
失敗の代表パターンは、大きく分けて四つです。
一つ目は、会社とのやり取りが収束せずストレスが長引くタイプです。
二つ目は、金銭面で損をするタイプで、未払い賃金や残業代、有給の扱いが曖昧なまま終わってしまうケースが含まれます。
三つ目は、法的に踏み込めない業者を選び、交渉が止まるタイプです。
四つ目は、必要書類や貸与物の返却など事務がぐちゃぐちゃになり、転職や失業給付に影響するタイプです。
この四つはどれも「退職は成立しているのに失敗感が残る」典型で、先に知っておけば避けられるものがほとんどです。
ここから先の記事では、失敗の具体例を紹介しつつ、どうすれば最短で安全にゴールできるかを、相談現場で実際に多かった順に整理していきます。
ある相談では、退職代行で辞められたのに、離職票が届かず失業給付の申請が遅れて家賃の支払いに困った人がいました。
別の相談では、社宅の退去手続きが整理されないまま時間だけが過ぎ、結果的に余分な家賃を払うことになった人もいました。
どちらも「退職できたか」だけ見れば成功ですが、生活の現実としては強い後悔が残ります。
退職代行の価値は、最終的にあなたの手元に必要な書類が揃い、転職や給付の手続きが止まらず進むところまで含めて判断すべきです。
私は相談者に、退職日はゴールではなく「退職後の生活を立て直すスタートライン」だと伝えていました。
この視点を持つだけで、業者選びも依頼時の伝え方も、驚くほど変わります。
退職代行を選ぶ前に、あなたが守りたいものが「心の安全」なのか「お金」なのか「転職のスピード」なのかを決めておくと、失敗の定義がぶれません。
失敗の定義がぶれない人は、途中で会社が何を言ってきても必要以上に動揺せず、やるべき手続きを最短距離で終えられます。
相談現場で多い「失敗した気がする」の正体
退職代行の相談で私がよく聞いたのは、「失敗した気がするんですけど、これって失敗ですか」という不安の声です。
この「失敗した気がする」は、実は二つの原因に集約されます。
一つは、退職代行のサービス範囲を誤解していて、「やってくれると思ったこと」をやってくれなかったと感じるパターンです。
もう一つは、会社側の反応が強くて、「トラブルになったらどうしよう」という恐怖が膨らむパターンです。
前者で典型なのは、有給消化や未払い賃金の請求など「交渉」にあたる部分を、民間業者に頼んでしまったケースです。
民間の退職代行は、本人の退職意思を伝える「連絡代行」はできますが、法律上の交渉をすると非弁行為になり得るため、できることが限られます。
その結果、「会社が有給を認めないと言っているが代行が動けない」「退職日は会社が決めると言われて話が進まない」という状態に陥り、利用者は失敗だと感じます。
後者で多いのは、会社からの電話やメールが止まらない、実家に連絡すると脅される、退職届を受け取らないと言われる、といった強い反応に揺さぶられるケースです。
けれど法的には、労働者には退職の自由があり、期間の定めのない雇用なら原則として退職の意思表示から二週間で退職できます。
ここで大事なのは、「会社が怒っている=退職できない」ではないという視点です。
私が対応した相談の中でも、最初は荒れていた会社が、書面で意思表示が整理されると急にトーンダウンし、最終的には淡々と手続きが進んだ例が数多くありました。
失敗を避けるには、あなたが求めるゴールを最初に言語化して、サービス範囲に合った依頼先を選ぶことが必要です。
この後の章で「どの依頼先なら何ができるのか」を具体的に整理するので、今は「失敗の多くは誤解から始まる」と覚えておいてください。
私が印象に残っているのは、依頼した民間業者が「有給は会社が決めるので無理です」とだけ言い、相談者が泣きながら電話してきたケースです。
その方は有給が20日以上残っていて、消化できれば次の仕事までの生活費が確保できる状況でした。
このとき必要だったのは気合ではなく、誰がどこまで法的に動けるのかという設計でした。
同じ相談でも、最初から交渉が可能な窓口を選んでいれば、やり取りの往復が減り、精神的負担も小さくできた可能性があります。
会社の反応が強いときほど、あなたは「怒らせない言い方」を探してしまいがちですが、実務では「形式を整える言い方」のほうが効きます。
たとえば退職届の提出方法、連絡窓口の一本化、必要書類の送付先の指定などを先に固めるだけで、相手の主張が空回りしやすくなります。
「失敗しやすい条件」は事前に見分けられる
退職代行の失敗は運ではなく、事前に分かる「条件」が重なると起きやすくなります。
私が相談現場でヒヤッとしたのは、雇用形態や状況によっては、ただ連絡を代行するだけでは整理しきれない論点が出てくるケースです。
代表例が、期間の定めがある契約社員や、試用期間中、役職者、そして引き継ぎの負担が極端に大きい職種です。
期間雇用は「やめたい」だけでは足りず、途中退職の正当事由や損害の話題が出やすいので、対応の筋道を最初から設計しておく必要があります。
また、会社から「損害賠償だ」「懲戒だ」と強く言われやすいのは、貸与物が多い、金銭を扱う、機密情報に触れる、対外的な責任がある、といった環境です。
実際には賠償が簡単に認められるわけではありませんが、相手が強気に出てくるほど心理的負担が上がり、判断がぶれやすくなります。
さらに見落とされがちなのが、未払い賃金や残業代が絡むケースで、ここを回収したいなら「交渉」や「請求」の手段が必要になります。
民間業者で止まってしまい、結局あとから弁護士に相談し直して二度手間になった相談もありました。
一方で、労働組合が運営する退職代行は団体交渉の枠組みで交渉が可能な場合があり、論点次第では選択肢になります。
つまり、失敗しやすい条件とは「交渉が必要なのに交渉できない窓口を選ぶ」「相手の反応が強くなりそうなのに証拠や段取りがない」ことです。
逆に言えば、あなたの状況を棚卸しして、必要なカードを揃えたうえで依頼先を決めれば、失敗の確率はぐっと下がります。
次のh2では、実際にあった失敗ケースを具体的に紹介し、どの条件が引き金になったのかを解説します。
たとえば医療や介護など人手が足りない現場では、「今日から来ないなら患者に迷惑だ」と責められ、罪悪感で折れそうになる相談が多くありました。
そこで重要なのは、迷惑を理由に退職を止める権限は会社にない一方で、引き継ぎや返却物の段取りはあなたの負担を減らす形で設計できるという現実です。
また、退職直前に会社が「退職願を出すなら自己都合ではなく懲戒にする」と言うことがありますが、脅し文句として使われることも多いです。
懲戒は会社が自由に決められるものではなく、就業規則の根拠と手続きが必要なので、言われた瞬間に萎縮してしまうのが一番もったいないです。
こうした強い言葉が出やすい職場ほど、証拠の確保と、交渉できる窓口の選択が保険になります。
私は相談者に、条件が重いほど「安さ」より「対応範囲」を優先して選ぶよう勧めていました。
最初の一歩で差がつく、失敗回避の準備
退職代行を使うか迷っている段階でも、失敗を避けるためにできる準備があります。
私が相談でまず確認していたのは、「いつから働いていて、雇用形態は何か」「未払い賃金や有給の残りはあるか」「貸与物と私物は何があるか」という三点です。
この情報が整理できると、退職日の設計、会社への連絡手段、必要書類の回収ルートが一気にクリアになります。
次に大切なのは証拠で、就業規則、雇用契約書、給与明細、タイムカード、業務連絡の履歴などを手元に集めておくと、相手が強く出たときに話が崩れにくくなります。
特に未払いが疑われる場合は、給与明細と勤務実態が分かる記録があるだけで、交渉の見通しが変わります。
そして意外に効果が大きいのが、会社からの連絡をどう扱うかの方針を決めることです。
「連絡が来たら怖くて出てしまう」という状態だと、相手のペースに巻き込まれてしまい、退職届の提出や返却物の段取りが後手に回ります。
依頼先が決まったら、連絡窓口を一本化して「本人への連絡は控えてください」と明確に伝える設計にしておくと、精神的負担が減ります。
また、退職届は口頭よりも強く、内容証明など書面で退職の意思表示を残す選択肢を持っておくと、受け取り拒否などの揺さぶりに耐えやすくなります。
私は相談者に「退職は喧嘩ではなく事務手続きです」と伝えてきましたが、準備ができている人ほど、感情の波に飲まれず淡々と完了まで進めます。
この章でお伝えした準備をしておくだけで、退職代行の選択肢が広がり、失敗の芽を早い段階で摘めるようになります。
準備の中でも特に効果が高いのは、会社に返すものと会社から受け取るものを、紙に書き出してチェックリスト化することです。
返すものの例は、社員証、制服、PC、スマホ、セキュリティカード、社宅の鍵などで、受け取るものの例は、離職票、源泉徴収票、雇用保険被保険者証、年金手帳の返却、退職証明書などです。
これを一覧にしておくと、電話で揺さぶられても「やること」が視界に残るので、心理的に崩れにくくなります。
また、退職理由を聞かれたときの返答も一文で決めておくと、会話の主導権を握られにくくなります。
私は多くの相談者に、理由は「一身上の都合で退職します」で十分だと伝え、細かな説明はしない方針を勧めていました。
相手が納得するまで説明しようとすると、その瞬間に議論の土俵に乗ってしまい、退職の手続きが遅れやすいからです。
実際にあった退職代行の失敗ケース5選
ここからは、私が法律事務所で受けた相談の中でも「失敗した」と感じやすかったパターンを、個人が特定されない形で再構成して紹介します。
先に言っておくと、失敗はあなたのせいではなく、準備不足や依頼先のミスマッチで起きることがほとんどです。
同じ落とし穴にハマらないために、どこで何がズレたのかをケースごとに見ていきましょう。

失敗例1:会社から本人に連絡が止まらず、心が折れかけた
退職代行を使う目的の一つは、会社との直接連絡を断って心身を守ることです。
ところが現場では、依頼したのに会社から本人へ電話やSMSが来続け、「これって意味あるの?」と不安が爆発する相談が少なくありませんでした。
私が対応したケースでは、民間業者に依頼した直後から上司が一日に何度も着信を入れ、さらに家族にまで連絡しようとする動きがありました。
相談者は「出ないともっと悪化しそう」と恐れて一度電話に出てしまい、結果として謝罪と説得のループに巻き込まれました。
このタイプの失敗は、退職の成立以前に連絡窓口の一本化が徹底できていないことが原因です。
代行業者が会社へ「本人への連絡は控えてください」と伝えるだけでなく、本人側も着信設定やメールのフィルタで“受けない仕組み”を作らないと、相手は揺さぶりを続けます。
特にブラック気質の職場だと、「本人が出るまでかけ続ける」「休んでいる実家へ連絡する」といった行動が平然と出ます。
そのとき大事なのは、あなたが悪いから連絡されているのではなく、相手が主導権を取り戻すために不安を煽っているだけだと理解することです。
私は法律事務所で、連絡が止まらず眠れない人に対し、退職届の提出方法と連絡経路をセットで組み直す提案をよくしていました。
具体的には、退職届を内容証明で送る、返却物は宅配で送る、受け取り書類の送付先を明記する、連絡は代理人または指定メールに限定する、といった事務の固め方です。
さらに、着信やメールは削除せず、日時が分かる形で保存しておくと、ハラスメントがエスカレートした際の抑止力になります。
会社が「会って話さないと受理しない」と言ってきても、退職の意思表示は書面で成立し得るので、会うかどうかはあなたが選べます。
そして、会社が緊急連絡先に電話してきそうなら、家族にも「退職手続き中で、会社から連絡が来ても取り次がないでほしい」と一言共有しておくと安心です。
この整理ができると、会社側の“電話で崩す”戦術が効きにくくなり、本人の精神が回復し始めます。
失敗しやすい人ほど「相手が怒るから出たほうがいい」と感じますが、実務では「出ると長引く」ことが多いです。
退職代行を使うなら、サービスの連絡代行だけに頼らず、あなたの生活を守るための連絡遮断の設計まで一緒に考えるのが失敗回避の近道です。
失敗例2:有給や未払い賃金を取りこぼし、「辞めたのに損をした」
退職代行を使って辞められても、金銭面で損をすると強い後悔が残ります。
相談で多かったのは、有給休暇が残っているのに消化できず、そのまま最終出勤日で処理されてしまったケースです。
本人は「代行に頼めば有給もまとめてお願いできる」と思っていたのに、業者から「交渉はできません」と言われて初めて現実を知り、そこで失敗感が一気に大きくなります。
法律事務所にいた頃、私が受けた相談でも「有給が15日残っているのに0日扱いになった」というものがありました。
会社側は「もう来ないなら欠勤で処理する」と言い、民間業者は非弁行為の関係で踏み込めず、相談者だけが板挟みになっていました。
有給は労働者の権利ですが、現実には申請の手順や時季変更権の主張など、論点が出やすいので、相手が争う姿勢だと調整が必要になります。
この調整が必要なのに、交渉できない窓口を選ぶと「辞められたけどお金が消えた」という失敗になります。
同じ構造は未払い残業代にも当てはまります。
退職代行の依頼時点で「残業代を請求したい」と考えていたのに、退職連絡だけで終わってしまい、証拠も整理できず、そのまま時間が過ぎて請求しづらくなる相談もありました。
特にタイムカードが会社管理で、退職後に閲覧できなくなる職場だと、証拠が揃わないまま話が流れやすいです。
こうした取りこぼしを避けるには、退職代行に依頼する前に「自分が何を回収したいか」を明確にし、回収が目的なら交渉可能な窓口を選ぶことが前提です。
労働組合型なら団体交渉の枠で話ができる場合があり、弁護士なら法的代理として請求まで視野に入ります。
私が相談者に必ず聞いていたのは、「有給は何日残っていますか」「給与明細に不自然な控除や未払いはありませんか」という点でした。
そのうえで、雇用契約書、就業規則、勤怠記録、業務チャットのログなどを先に保存してもらうと、交渉の土台ができます。
また、有給については「退職日までの期間を休暇として申請する」形で、日付を具体的に並べて伝えると、議論が感情論になりにくいです。
逆に、ここを曖昧にしたまま「とにかく明日辞めたい」で走ると、後から冷静になったときに損失が見えてきて、自己否定につながりやすいので注意してください。
辞めること自体がつらい状況ほど、せめてお金の部分は落とさない設計にして、退職後の生活を安定させましょう。
失敗例3:追加料金や返金トラブルで「安さ」で選んだことを後悔
退職代行の失敗で意外と多いのが、退職そのものより料金トラブルです。
私のところにも、「最初は安かったのに、途中から追加費用を請求された」「返金保証と言われたのに返ってこない」という相談が定期的に来ていました。
あるケースでは、広告で「一律○円」と書かれていたので依頼したのに、いざ会社が強めに反応した途端に「追加でオプションが必要です」と言われました。
相談者はもう会社と連絡したくない一心で支払ってしまい、最終的に想定の倍近い金額になっていました。
料金が膨らむ原因は、大きく二つあります。
一つは、サービス範囲が曖昧で、本人が当然含まれると思っていた作業が“別料金”になっているパターンです。
もう一つは、運営体制が弱く、担当者と連絡が取れない、進捗が共有されない、というパターンです。
後者は特に怖くて、会社から返信が来ているのに代行側が確認せず、退職手続きが止まったまま時間だけが過ぎてしまいます。
実際に「LINEが既読にならない」「電話番号がつながらない」と泣きそうな声で相談が入ったこともありました。
法律事務所で相談を受けていると、こうした業者ほど利用規約の文章が分かりにくく、返金条件が極端に狭い傾向がありました。
失敗を避けるには、料金表そのものよりも、追加料金の発生条件と返金条件を先に確認することが重要です。
具体的には、「連絡回数に上限があるか」「退職できなかった場合の返金は全額か一部か」「途中キャンセルの扱いはどうなるか」をチェックします。
また、支払い前に「このケースだと追加費用は発生しますか」とあなたの状況を簡単に伝え、回答を文章で残しておくと安心です。
そして、契約前に質問した内容をスクリーンショットなどで残しておくと、後で言った言わないになりにくいです。
私が危険サインとして見ていたのは、運営会社の住所や責任者名が不明確、特商法表記が薄い、口コミが極端に短文だけ、などの“身元の弱さ”です。
さらに、相談窓口がLINEしかなく、緊急時に電話で状況確認できない体制だと、トラブル時に逃げ場がありません。
私は相談者に、金額だけで選ぶより「想定外の事態が起きたときに誰がどう動くか」を見て選ぶよう伝えていました。
退職代行は緊急サービスに見えますが、実態は事務手続きの連続なので、連絡体制と約款の透明性が弱いところほど失敗しやすいです。
安さは魅力ですが、退職後の生活を守るために、あなたのリスクに見合う“説明責任のある窓口”を選びましょう。
失敗例4:離職票などの書類が届かず、転職や給付が止まった
退職代行の失敗で、生活に直撃しやすいのが退職後の書類トラブルです。
退職自体は成立しているのに、離職票や源泉徴収票が届かず、失業給付や年末調整が進まず、焦りだけが増えていきます。
法律事務所で相談を受けていた頃、「もう会社と関わりたくないから代行に任せたのに、結局自分が催促している」という声を何度も聞きました。
ある相談者は、次の会社の入社手続きで雇用保険被保険者証が必要なのに、会社が郵送を先延ばしにして入社日が迫っていました。
別の相談者は、失業給付を申請したいのに離職票が届かず、貯金が減っていく恐怖で眠れなくなっていました。
この失敗の原因は、退職代行の依頼時点で「何を、いつまでに、どこへ送ってほしいか」が整理されていないことです。
退職代行は退職意思の伝達が中心で、書類の発行スケジュールまで自動で進むわけではありません。
会社側が不誠実だと、書類を遅らせることで“最後の嫌がらせ”をしてくることもあります。
だからこそ、依頼時に「離職票はいつ頃送付予定か」「源泉徴収票はいつ発行か」「送付先は現住所か」などを、代行側から確認してもらう設計が必要です。
私が相談者に勧めていたのは、受け取りたい書類をリスト化して、代行にテンプレで送ってもらう方法です。
リストの例としては、離職票、源泉徴収票、雇用保険被保険者証、年金手帳の返却、退職証明書、社会保険資格喪失証明書などがあります。
このうち社会保険資格喪失証明書は、国民健康保険への切り替えや扶養入りの手続きで必要になり、遅れると医療費の不安が一気に増えます。
また、退職証明書は転職先から求められることがあり、出せないと「本当に退職したのか」を疑われてしまう場合があります。
書類が届かないときは、返却物が未完了で会社が止めているケースもあるので、社員証やPCなどは追跡できる方法で送り、控えを残しておくと話が進みます。
そして、もし期限を過ぎても届かない場合は、代行経由で再度書面で督促し、それでも動かないなら行政の窓口や専門家に相談して“外部圧”を使うと進みやすいです。
退職後の手続きが止まると、あなたの回復期間そのものが削られるので、書類は「後でいい」ではなく「最優先の回収物」として扱ってください。
辞めたあとに困らないために、退職代行に依頼する時点で「受け取り期限」と「送付先住所」を明文化しておくことが、失敗を成功に変える小さなコツです。
失敗例5:雇用形態や立場が重く、想定以上に揉めてしまった
退職代行の失敗は、会社の質だけでなく、あなたの雇用形態や立場によって起きやすさが変わります。
特に相談が多かったのは、契約社員など期間の定めがある雇用で、途中退職を巡って会社が強く反発するケースです。
「契約期間中は辞められない」「損害賠償を請求する」と言われ、恐怖で判断が止まってしまう人がいました。
また、店長や主任などの役職者、少人数の現場で引き継ぎ量が多い人は、会社が“責任”を理由に退職を引き延ばそうとする傾向があります。
法律事務所で対応した中には、退職代行に依頼したのに「引き継ぎが終わるまで認めない」と言われ、業者が「こちらでは対応できません」と手を引き、相談者が孤立した例もありました。
このとき起きていた問題は、退職の意思表示そのものではなく、「争点が交渉領域に入っているのに、交渉できない窓口を選んでいた」ことです。
期間雇用の場合、途中退職は制限され得る一方で、やむを得ない事情があれば退職が認められる余地もあり、事案ごとに整理が必要になります。
実務では、メンタル不調、家庭事情、ハラスメントなど、状況の説明と証拠の有無で見通しが変わるため、テンプレ対応だけだと失敗しやすいです。
さらに、会社が強く出ると「懲戒にする」「退職届は受け取らない」といった言葉が並びますが、言葉の強さと法的な実現可能性は一致しません。
ただし、こうした言葉に動揺して不用意に出社したり、電話で感情的に反論したりすると、相手に“交渉材料”を与えてしまい、状況が複雑になります。
失敗を避ける現実的な方法は、最初に“揉めやすい条件”を自覚し、必要なら弁護士や労働組合など、交渉や法的整理ができるルートを選ぶことです。
私は相談者に、役職や契約形態が重いほど「安い退職代行で一発解決」を狙うより、段取りと証拠を固めて安全に抜ける作戦を勧めていました。
具体的には、引き継ぎ資料を最低限まとめる、貸与物とアクセス権限を整理する、業務データの私物持ち出しをしない、という“攻められない形”を作ることです。
社宅や寮に住んでいる場合は、退去日と鍵の返却方法が揉めやすいので、退職連絡と同時に「退去希望日」と「返却手段」を確定させると火種が減ります。
また、試用期間中でも「試用だから辞められない」と言われることがありますが、結局は雇用契約の一種なので、感情ではなく手続きとして整理することが重要です。
揉めやすい条件がある人ほど、退職代行は「連絡係」ではなく「手続き設計のパートナー」として選ぶと、失敗の確率を下げられます。
失敗の9割は「業者選び」で決まる理由
退職代行で失敗した人の相談をたどると、原因は手続きそのものより依頼先のミスマッチであることが多いです。
私は法律事務所で約3000件の相談を受ける中で、同じ悩みでも「最初の選び方」だけで結果が大きく変わる場面を何度も見てきました。
この章では、退職代行の種類とできることの違いを整理し、あなたの状況に合う選び方を具体化します。

まず知るべきは「退職代行は三種類ある」という事実
退職代行と一口に言っても、実務では大きく民間業者型、労働組合型、弁護士型の三種類に分かれます。
この違いを知らないまま価格や広告の雰囲気だけで選ぶと、必要な場面で動けず「失敗した」と感じやすくなります。
民間業者型は、本人の退職意思を会社に伝える連絡代行が中心です。
民間業者型は、会社と条件を詰めるような交渉に踏み込むと非弁の問題が出るため、できる範囲が限られます。
労働組合型は、団体交渉の枠組みで会社と話し合える場合があり、条件調整に強いことがあります。
労働組合型でも、個別の法的請求や訴訟対応まで常に担えるわけではないので、対応範囲の確認は必要です。
弁護士型は、弁護士が代理人として対応できるため、交渉や請求、法的整理まで見通しを立てやすい点が強みです。
弁護士型は費用が高くなりやすい一方で、揉めやすい案件ほど「結果的に最短だった」という相談者の声も多かったです。
ここで重要なのは、どれが絶対に正しいという話ではなく、あなたの状況が「連絡だけで足りる」のか「交渉が要る」のかを見極めることです。
私の経験上、連絡だけで足りるのは、貸与物や未払いが少なく、会社が比較的手続きに従うタイプの職場であることが多いです。
逆に、未払い賃金や有給消化、退職日の調整、退職理由の記載、懲戒の示唆などが絡むと、連絡代行だけでは止まりやすいです。
相談現場では「最初は安いところに頼んだが、結局弁護士に頼み直して二重にお金がかかった」というケースが繰り返し起きていました。
退職代行は魔法ではなく、あなたの状況に合う機能を買うサービスだと考えると、選び方がぶれにくくなります。
この前提を押さえたうえで、次の見出しでは「ミスマッチが起きる瞬間」を具体的に解説します。
失敗が起きるのは「交渉が必要なのに交渉できない」瞬間
退職代行の失敗は、会社が強いから起きるのではなく、必要な場面で打てる手が足りないときに起きます。
その典型が、あなたの希望が交渉領域に入っているのに、交渉できない窓口を選んでしまうパターンです。
たとえば「有給を全部消化して辞めたい」という希望は、会社が素直に認めれば連絡だけで済みます。
しかし会社が「欠勤扱いにする」「業務が回らない」と拒否した瞬間に、論点は調整や主張の整理に移ります。
このとき代行側が「こちらでは対応できません」と止まると、相談者は会社の圧に一人で向き合うことになります。
未払い賃金や残業代の回収も同じで、請求の意思を示した時点で、相手は証拠や根拠の話に持ち込みます。
証拠の整理と主張の組み立てがないまま話が進むと、会社が「証拠がないので無理」と突っぱねて終わりやすいです。
また、期間の定めがある雇用や役職者の退職は、会社が責任論を持ち出しやすく、争点が複雑化しやすいです。
こうした場面で重要なのは、相手の強い言葉に反応して感情で動くのではなく、手続きとしての論点を切り分けることです。
私は法律事務所で「会社に損害賠償と言われて震えている」という相談を多く受けました。
その多くは、賠償が現実に成立するか以前に、相手が主導権を取るための脅し文句として使っていました。
ただし脅し文句でも、放置するとストレスが積み上がり、あなたが折れて不利な合意をしてしまう危険があります。
だからこそ、揉める可能性があるなら、最初から交渉や法的整理に強い窓口を選んで「相手の揺さぶりが効かない状態」を作ることが失敗回避につながります。
一方で、会社が淡々と手続きを進めるタイプなら、民間業者型でもスムーズに終わることは十分あります。
あなたの状況を見たときに「どこで揉めそうか」を一つでも想像できるなら、対応範囲が広い選択肢を優先したほうが安心です。
次は、私が相談現場で実際に見た「選び方の間違い」を、より具体的な体験談として紹介します。
相談現場で見た「選び方の落とし穴」と、立て直し方
私が法律事務所で受けた相談の中で、特に多かった落とし穴は「広告の言葉をそのまま信じてしまう」ことでした。
たとえば「会社と一切連絡不要」と強く打ち出していても、実際には本人が書類請求をする場面が残ることがあります。
そのギャップを知らずに依頼すると、会社からの連絡が来た瞬間に「話が違う」となり、精神的に崩れやすくなります。
ある相談者は、LINEだけで完結するという触れ込みに惹かれて依頼しました。
しかし担当者の返信が半日以上空き、会社からの連絡に耐えられず本人が電話に出て、説得されて出社してしまいました。
結果として退職は長引き、最後は「自己都合なら早く辞めさせる」と不利な条件を飲まされてしまいました。
別の相談者は、料金が最安だったので即決しました。
ところが後から「書類の郵送指示は別料金」「二回目以降の連絡は追加費用」と言われ、支払いが膨らみました。
その方はお金が尽きかけていたので、必要な書類を諦めて退職だけで終わらせる判断をしてしまい、後悔が残りました。
さらに厄介だったのは、運営体制が弱い業者で「担当者が退職して連絡が取れない」という相談です。
このケースでは、会社側が「本人から連絡がないので手続きできない」と主張し、手続きが止まったまま時間が過ぎました。
立て直しで有効だったのは、退職意思を書面で確定させ、連絡経路を一本化し、受け取り書類の期限を明文化することです。
また、未払い賃金や有給など争点がある場合は、早い段階で交渉できる窓口に切り替えることで、状況が動き出すことが多いです。
ここで一つだけ強調したいのは、途中で依頼先を変えるのは恥ではないということです。
実際の相談でも「最初に選んだ先では無理だと分かったので切り替えたい」という人ほど、その後の結果が安定しました。
失敗を引きずる人は「もうお金を払ったから」と自分を縛り、動けないまま時間と心を削ってしまいます。
選び方の落とし穴に気づいたら、損切りではなく安全確保だと捉えて、早く手を打つほうが結果的に負担が小さくなります。
次の見出しでは、こうした落とし穴を避けるために、契約前に必ず確認したいチェック項目を具体的にまとめます。
失敗しない業者選びのチェックリストと、あなたに合う結論
退職代行を選ぶときは、口コミの星よりも「あなたの状況に必要な機能が揃っているか」をチェックするほうが失敗しにくいです。
まず最初に確認したいのは、あなたが希望することが交渉に当たるかどうかです。
有給消化、未払い賃金、退職日の調整、懲戒の示唆への対応が気になるなら、交渉が可能な選択肢を検討する価値があります。
次に、契約前に必ず確認したいのは追加料金の条件です。
連絡回数に上限があるか、書類請求は含まれるか、難航時にオプションが発生するかを文章で確認してください。
返金保証がある場合は、全額か一部か、条件は何か、どのタイミングで返金対象外になるのかを具体的に見てください。
運営体制の確認も重要で、電話やメールなど複数の連絡手段があるか、営業時間外の緊急対応はどうかを見ます。
特商法表記や運営会社情報が明確か、所在地や代表者名が確認できるかも、トラブル回避の基本です。
相談時の受け答えで、あなたの状況を質問せずに即契約を促すところは、ミスマッチを起こしやすいので注意してください。
逆に、雇用形態、有給残日数、貸与物、社宅の有無、未払いの可能性などを丁寧に聞いてくる窓口は、設計意識があることが多いです。
ここまでのチェックを踏まえて、あなたが選びやすい結論を三つに整理します。
会社が比較的淡々としていて、争点が少ないなら、連絡代行に強い民間業者型でも完了しやすいです。
条件調整が必要で、費用を抑えつつ交渉も視野に入れたいなら、労働組合型が候補になります。
揉めやすい条件がある、または会社が強硬で不安が大きいなら、弁護士型を検討したほうが心身の安全を守りやすいです。
私は相談者に、最安値を探すよりも「退職後の生活が止まらない形」を優先して選ぶように伝えてきました。
あなたが守りたいのが心の回復なら、返信スピードと連絡遮断の設計に強い窓口が合います。
あなたが守りたいのがお金なら、有給や未払いに対応できる範囲を最初に確かめることが合います。
次では、ここまでの話を踏まえて、退職代行で絶対に失敗しないための具体的なチェックリストを、実行順に落とし込みます。
退職代行で絶対に失敗しないためのチェックリスト
ここまで読んで「結局、自分は何をすれば失敗しないの?」と感じた方へ、実務で使える手順をチェックリストに落とし込みます。
私は法律事務所で相談を受けるとき、感情の整理より先に「やることを見える化」して不安を小さくしていました。
あなたも同じように、順番を守って準備すれば、退職代行の成功確率は一気に上がります。

チェック1:依頼前に「状況の棚卸し」を10分で終わらせる
失敗を避ける第一歩は、依頼先に連絡する前に「自分の状況」を短時間で棚卸しして、必要なカードを揃えることです。
棚卸しは難しく考えず、メモに雇用形態、入社日、最終出勤希望日、有給残日数、未払いの心当たり、社宅や寮の有無、貸与物、緊急連絡先にされている家族の八項目を書くだけで十分です。
この八項目が揃うと、退職代行が会社へ何をどう伝えるべきかが具体化し、曖昧さが原因のトラブルを減らせます。
相談現場で多かった失敗は「有給が残っていたのに言い忘れた」「社宅の退去日を決めていなかった」「返却物が何か分からず会社に口実を与えた」という、準備不足から起きるものです。
特に有給と書類は、退職後の生活を左右するので、依頼前に必ず数字で把握してください。
有給残日数が分からない場合は、勤怠システムのスクリーンショットや、直近の有給付与通知の画像を保存しておくと後で揉めにくいです。
未払いが疑われる場合は、給与明細を直近数か月分まとめて保存し、残業時間が分かる記録も可能な範囲で確保してください。
貸与物は、社員証、制服、PC、スマホ、鍵、セキュリティカードなどをリスト化し、返却方法を宅配にするか手渡しにするかを先に決めておきます。
ここで重要なのは、準備を完璧にすることではなく「退職代行に伝えるべき論点が漏れない状態」を作ることです。
私は相談者に、棚卸しができた時点で半分は終わっていると伝えていました。
なぜなら、会社が強く出るときほど「相手はあなたの曖昧さ」を突いてくるので、先に事務情報を固めるだけで揺さぶりが効きにくくなるからです。
チェック2:退職代行に渡す「伝達テンプレ」を作ってミスをゼロにする
次にやるべきは、退職代行へ渡す情報をテンプレ化して、伝え漏れによる失敗を防ぐことです。
テンプレには、退職意思の確定、退職日、有給の扱い、本人への連絡拒否、書類送付先、返却物の方法の六点を必ず入れてください。
退職意思は「一身上の都合により退職します」と簡潔に固定し、理由説明の深掘りに入らない設計にします。
退職日は「最終出勤はいつで、退職日をいつにしたいか」を分けて記載すると、会社側が論点をずらしにくいです。
有給は「残日数」と「消化したい期間」を日付で示すと、会話が感情ではなく手続きに寄ります。
本人への連絡拒否は「連絡はすべて代行窓口へ」と明記し、電話やメールで本人を揺さぶる余地を減らします。
書類送付先は郵便番号から正確に書き、転居予定がある場合は「確実に受け取れる住所」を指定します。
返却物は宅配で送るなら「発送予定日」と「追跡番号を共有する」方針まで書くと、会社が受領を理由に遅延させにくいです。
相談現場でよくあったのは、テンプレがないまま電話で口頭相談を進め、重要な条件が抜けて後から揉めるパターンです。
特に「有給は当然取れると思っていた」「離職票は勝手に届くと思っていた」という思い込みが、失敗感につながります。
テンプレを作ると、あなた自身の希望が整理されるだけでなく、代行側も案件の難易度を正確に判断しやすくなります。
その結果として、最初の時点で「このケースは交渉が必要なので対応範囲はここまでです」といった説明が出やすくなり、ミスマッチが減ります。
私は相談者に、テンプレは長文でなくていいので、六点が一枚に収まる形で作るよう勧めていました。
この一枚があるだけで、退職代行の品質が一段上がり、失敗の芽が減ります。
チェック3:退職届と証拠を「先に確保」して、会社の揺さぶりを無力化する
退職代行で揉めやすい職場ほど、最後に「退職届を受け取らない」「話し合いが必要だ」と言って手続きを止めようとします。
この揺さぶりに負けないために、あなたが先に用意すべきなのは退職届と証拠です。
退職届は、氏名、日付、退職の意思表示、会社名、提出先をシンプルに書き、理由は「一身上の都合」と固定します。
提出方法は、出社せずに済ませたいなら郵送を基本にし、受け取り拒否が心配なら内容証明も選択肢に入れます。
内容証明は心理的なハードルが高く見えますが、実務では「意思表示を残す手段」として淡々と使うほど効果があります。
証拠は、雇用契約書、就業規則、給与明細、勤怠記録、業務指示のチャット、ハラスメントがあるなら記録やメモを、可能な範囲で保存します。
この保存は、今すぐ請求するためではなく、会社が強く出たときに「こちらも整理している」と示す保険になります。
相談で怖かったのは、退職後にアカウントが停止され、勤怠データや給与明細が見られなくなって証拠が消えるケースです。
だからこそ、退職連絡の前に「自分の手元に必要資料がある状態」を作るのが安全です。
また、会社に返却する物が多い人ほど、返却の控えを残しておくと、会社が「返っていない」と言い張る余地を減らせます。
宅配で返す場合は追跡可能な方法を選び、発送伝票の控えを保存し、可能なら中身の写真も撮っておくと安心です。
私は相談者に、証拠を集めることは戦うためではなく「戦わずに終えるため」だと伝えていました。
準備がある人ほど会社は深追いしにくく、結果としてあなたが平穏に離脱できます。
チェック4:会社からの連絡を遮断し、メンタルを守る仕組みを作る
退職代行を使うのに、会社からの着信で毎日心臓が跳ねる状態が続くと、それだけで「失敗だった」と感じやすくなります。
失敗を避けるには、会社の連絡を止める“お願い”ではなく、あなたの生活から切り離す仕組みを作ることが必要です。
具体的には、会社の番号を着信拒否にする、知らない番号は留守電に回す、メールはフィルタで別フォルダに送る、通知を切る、という四つを同時にやります。
ここで大切なのは、記録は残すが、リアルタイムで見ないことです。
相手の言葉をその場で読んだり聞いたりすると、論理ではなく恐怖で反応してしまい、余計な連絡や出社につながります。
家族が緊急連絡先になっている場合は、「退職手続き中なので会社から連絡が来ても取り次がないでほしい」と先に共有しておくと安心です。
実務では、会社が家族へ連絡する動きは“本人を揺さぶる手段”として使われることがあり、ここを防ぐだけで心が安定しやすいです。
また、SNSで職場の人とつながっている場合は、退職が落ち着くまでミュートや制限をかけておくと、余計な情報で消耗しません。
退職代行側には「本人への連絡は控えるように」と伝えてもらい、連絡窓口を代行へ一本化する文言を入れてもらいます。
それでも連絡が続く場合は、日時が分かる形で保存し、代行側に共有すると対応の材料になります。
私は相談者に「連絡はあなたの価値を測るものではなく、相手の都合で投げられている」と伝えていました。
退職は事務手続きであり、あなたの感情を削る必要はありません。
連絡遮断ができると、睡眠が戻り、判断力が回復し、退職後の手続きまで安定して進められます。
チェック5:退職後に詰まる人が多い「手続きロードマップ」を先に決める
最後のチェックは、退職後の手続きを時系列で決めておくことです。
退職代行の失敗感が強く残る人ほど、退職直後に必要な書類が揃わず、健康保険や失業給付の手続きが止まって焦ります。
そこで、退職前から「何を、いつ、どこで」やるかのロードマップを作ると、退職後の不安が小さくなります。
まず、健康保険は国保に切り替えるのか、家族の扶養に入るのか、前職の任意継続を検討するのかを決めます。
扶養に入る場合は、必要書類として社会保険資格喪失証明書を求められることが多いので、会社へ早めに請求しておきます。
次に、失業給付を検討するなら離職票が要るため、発送予定日を退職代行経由で確認し、遅れたときの督促方法も決めます。
転職先が決まっている場合は、入社手続きで雇用保険被保険者証や源泉徴収票が必要になることがあるので、受け取り期限を意識してください。
住民税は退職月のタイミングによって徴収方法が変わり、後から一括請求が来て驚く相談があったので、支払いの見通しを立てておくと安心です。
年金や税の手続きは自治体や状況で違うため、まずは「退職直後に困るのは保険と給付と書類」という優先順位を固定します。
私は相談者に、退職後の不安は“情報不足”で増えるので、先にロードマップを紙に書くよう勧めていました。
紙に書くと、会社からの連絡が来ても「自分がやるべきこと」が見えるため、揺さぶりに飲まれにくくなります。
退職代行を使う目的が心身の回復なら、退職後の生活を止めないことが最優先であり、ロードマップはその土台になります。
それでも不安な人へ|安全に退職するための最終判断基準
ここまで準備しても、それでも怖いと感じるのは自然なことです。
私は法律事務所で約3000件の退職相談に触れる中で、最後の最後に人を止めるのは手続きより「感情の揺れ」だと痛感してきました。
この章では、あなたが迷った瞬間に立ち戻れる「最終判断基準」を、実務で本当に役立った形にまとめます。

基準1:あなたが守りたいのは「心・お金・スピード」のどれかを決める
退職代行で失敗しない人は、最初に優先順位を決めています。
優先順位が決まると、会社の反応や周囲の意見で揺れても、判断がブレにくくなります。
私は相談者に、まず「心」「お金」「スピード」の三つのうち、今いちばん守りたいものを一つ選んでもらっていました。
ここで言う心とは、連絡や説得で消耗せず、睡眠を取り戻し、日常の安全を確保することです。
お金とは、有給や未払い賃金、退職後の給付など、生活を支えるキャッシュの損失を最小化することです。
スピードとは、最短で会社との関係を終わらせ、次の生活に移行するまでの時間を短くすることです。
たとえば心を最優先にするなら、連絡遮断の設計と対応の確実性を重視し、価格より安心感を優先したほうが失敗しにくいです。
お金を最優先にするなら、有給や未払いに触れる可能性があるため、交渉できる範囲を確認し、証拠の確保を優先すると結果が安定します。
スピードを最優先にするなら、退職届の提出方法と返却物の段取りを先に固め、必要書類の送付期限までセットで決めておくと詰まりにくいです。
逆に優先順位が曖昧だと、会社の強い言葉に反応して「会って話す」方向に寄り、気づけば時間もお金も心も削られます。
相談現場で印象に残っているのは、「とにかく早く辞めたい」と言っていた方が、上司の電話で罪悪感を刺激され、出社してしまい長期化したケースです。
その方は、本当は心を守りたかったのに、スピードの言葉で自分を急かしていたことに後から気づきました。
もしあなたが今迷っているなら、まずは今日だけでも「自分は心を守る」と決めてください。
心を守ると決めるだけで、電話に出ないことや、代行に窓口を一本化することが「冷たい行為」ではなく「正しい手続き」に変わります。
最終判断で迷ったら、選んだ優先順位に照らして「それは心を守る行動か」「それはお金を守る行動か」「それはスピードを守る行動か」と一度だけ問い直してください。
優先順位を決めるときは、「いま失ったら一番つらいもの」を基準にすると決めやすいです。
貯金が少なく家賃が迫っているならお金が最優先になりやすいです。
吐き気や不眠が出ているなら心が最優先になりやすいです。
転職先の入社日が決まっているならスピードが最優先になりやすいです。
そして、優先順位は一度決めたら、退職が落ち着くまで変えなくて大丈夫です。
途中で揺れたときは「いまは心を守る期間」と自分に言い聞かせるだけで、行動の基準が戻ります。
基準2:「揉めるサイン」があるなら、最初から強い窓口を選ぶ
退職代行の失敗は、揉めたこと自体より、揉めたときに打てる手が足りないことで起きます。
だから私は相談者に、揉める可能性が少しでもあるなら、最初から対応範囲の広い窓口を選ぶよう伝えていました。
揉めるサインは、意外と分かりやすいです。
たとえば「退職は認めない」「懲戒にする」「損害賠償だ」「退職届は受け取らない」といった言葉が普段から出る職場は、最後も同じ言葉を使います。
また、社宅や寮がある、貸与物が多い、金銭や個人情報を扱う、引き継ぎが一人に集中している、という環境も揉めやすいです。
さらに、期間の定めがある契約や、役職者、試用期間中など、立場が重い人は論点が増えやすいです。
このサインがあるのに「安いから」で選ぶと、途中で止まり、結局どこかで専門家に相談し直すことになりやすいです。
私は実務で、民間業者で止まった案件が後から流れ込み、時間と心が余計に削られてしまった姿を何度も見ました。
揉めるサインがあるなら、最初から「交渉が必要になったときに動けるか」を基準にしてください。
ここで大切なのは、いきなり戦う姿勢になることではなく、相手の揺さぶりに飲まれない安全装置を持つことです。
安全装置があると、人は落ち着いて事務手続きを進められます。
落ち着いて進められると、余計な電話や出社を避けられます。
余計な接触を避けられると、会社側の感情が燃え続ける燃料が減り、結果として早く静かに終わります。
揉めるサインがある人ほど、「会社が何を言ってくるか」を先に想定しておくと落ち着けます。
典型は「退職届は受け取っていない」「退職日は会社が決める」「損害が出たら請求する」という三点です。
この三点に共通するのは、相手があなたの不安を利用して主導権を握ろうとしていることです。
私は相談者に、相手の主張を論破しなくていいので、退職届の提出と返却物の発送という事実だけを積み上げるよう伝えていました。
事実が積み上がると、相手の言葉は強くても、手続きは前に進みます。
また、強い窓口を選ぶときは「交渉できるか」だけでなく、「書類回収の督促をどこまで代行できるか」も確認すると失敗が減ります。
会社が書類を遅らせる職場では、督促の質がそのまま生活の安定につながるからです。
問い合わせの段階で、あなたの雇用形態や有給残日数を聞かずに「大丈夫です」と言い切る窓口は、私は慎重に見るよう勧めます。
状況確認を省く窓口ほど、揉めたときに「想定外なので対応できません」と言いがちだからです。
逆に、質問が多い窓口は面倒に見えても、失敗の芽を先に潰そうとしている可能性が高いです。
揉めるサインがあるなら、強い窓口を選ぶことは遠回りではなく、最短ルートになり得ます。
基準3:退職後の生活が止まらないかを、退職日前に一度だけ確認する
退職代行で本当に怖いのは、辞めた後に生活の手続きが止まることです。
私は相談者に、退職日前に一度だけ「退職後の生活が止まらないか」をチェックするよう勧めていました。
チェックするのは難しいことではなく、三つの線をつなぐだけです。
一つ目は健康保険で、国保か扶養か任意継続かを決め、必要な書類を把握します。
二つ目はお金で、失業給付を検討するなら離職票の到着見込みを確認し、生活費の空白期間を計算します。
三つ目は転職で、次の会社に提出が必要な書類が何かを確認し、手元にないものはいつ届くかを押さえます。
この三つがつながると、退職日が決まった瞬間に「次の行動」が見えます。
次の行動が見えると、不安が減ります。
不安が減ると、会社の連絡に反応して余計なことを言わずに済みます。
実際にあった相談で、退職できたのに離職票が届かず、給付の申請が遅れて家賃の支払いが苦しくなった方がいました。
その方は「退職できれば終わり」だと思っていたため、書類の期限を最初に決めていませんでした。
もし退職連絡の時点で「離職票はいつ発送予定か」「送付先住所はここで良いか」を確定していれば、焦りはかなり減ったはずです。
退職代行を使うなら、退職の連絡と同じくらい、書類回収の設計に力を入れてください。
あなたが求めているのは、退職というイベントではなく、退職後の生活が回る状態です。
生活が回る状態を作るには、退職日前に一度だけ、保険と給付と転職の三点を紙に書いて確認するのがいちばん確実です。
書類は「いつか届く」ではなく、「いつまでに必要か」を基準に逆算すると管理しやすいです。
失業給付を考えるなら、退職後すぐにハローワークへ行けるように、離職票の到着目安を把握しておくと安心です。
転職先がある場合は、入社手続きに間に合わない可能性がある書類を先に洗い出し、代替手段があるか確認しておくと焦りません。
たとえば雇用保険被保険者証が手元になくても、会社によっては後日提出で一旦進められることがあります。
逆に社会保険資格喪失証明書がないと保険切り替えが止まることがあるので、優先順位をつけて請求するのがコツです。
もし書類が遅れているなら、感情で責めるより「〇月〇日までに送付してください」と期限を文章で伝えるほうが動きやすいです。
会社が送付を渋るときは、まずは代行経由で書面の依頼を出し、返答期限を切るだけでも動くことがあります。
それでも動かない場合は、手続きの窓口であるハローワークや年金事務所に相談すると、必要書類の代替や確認の道筋が見えることがあります。
私は相談者に、困ったときは一人で抱えず、行政の窓口を「情報の地図」として使うよう勧めていました。
基準4:それでも怖いときは「自分を守る選択」を正解にしていい
最後に、いちばん大切な基準をお伝えします。
それは、あなたが自分を守るために選ぶ退職を、あなた自身が正解にしていいということです。
退職の相談では「逃げだと思われませんか」と聞かれることが多いです。
私はそのたびに、逃げではなく回復のための撤退だと伝えてきました。
心や体が削れているときに、さらに我慢を積み上げても、人生の選択肢は増えません。
選択肢を増やすには、まず回復が必要です。
回復するには、いまいる環境から離れる必要があることもあります。
だから退職代行は、弱さの象徴ではなく、あなたの回復を早める道具になり得ます。
相談現場で、退職後に表情が戻り「もう少し早く頼めばよかった」と言う人をたくさん見ました。
逆に、ギリギリまで耐えて倒れてしまい、退職の手続き自体が負担になってしまった人もいました。
その差は根性ではなく、タイミングと設計です。
あなたが今日できる最小の設計は、退職の意思を固め、連絡窓口を一本化し、必要書類の期限を決めることです。
それだけで、会社の言葉に振り回される時間が減ります。
時間が減ると、呼吸が戻ります。
呼吸が戻ると、次の生活の選択肢が見えます。
もし今、胸が苦しいほど不安なら、あなたが守るべきものは「会社の都合」ではなくあなたの健康です。
私は法律事務所で相談者に、退職は誰かに許可されるものではなく、自分の人生を取り戻す手続きだと伝えていました。
あなたも、あなたの人生を取り戻して大丈夫です。
退職を決めたあなたは、誰かを困らせるために動いているのではなく、壊れないために動いています。
壊れてしまった後では、退職の手続きも、転職の準備も、生活の立て直しも何倍も苦しくなります。
だから「壊れる前に抜ける」は、立派な戦略です。
私は相談者に、会社の評価よりも、あなたが朝起きて呼吸できることを優先していいと繰り返し伝えていました。
退職代行を使う決断は、あなたが自分を守るために取れる選択肢の一つであり、恥ではありません。
退職を決めたあとに自己嫌悪が出るのは、あなたが真面目に働いてきた証拠でもあります。
ただ、その真面目さは会社のためだけに使うものではなく、これからの自分のためにも使っていいです。
私は相談者に「今日のあなたを守れるのは今日のあなたです」と伝えていました。
もし責める声が頭の中で止まらないなら、「退職は権利であり、病気を治すのと同じくらい普通の手続き」と紙に書いて見える場所に置いてください。
人は弱っているときほど、文字にして初めて安心できることがあります。


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